──批判も多かった12年『平清盛』の歴史考証を担当した東大教授の歴史学者・本郷和人氏に、「歴史考証家の役割とはなんなのか」について話を聞いた。彼が感じた、NHKスタッフの仕事ぶりとは? そして、「低視聴率に対する忸怩たる思い」とは?
本郷和人氏。
私が担当させていただいた「時代考証」ですが、実際にはどういうことをやっていたのか。
まず、「白本」と呼ばれる第一段階の脚本を読みます。そして、史実とかけ離れている点があれば、担当ディレクターにメールや電話で意見を伝える。基本的にはこれがすべてです。その意見を番組サイドや脚本の藤本有紀さんが反映させるかどうかは、向こう次第ですしね。
ただ、実際に私が何をどこまで、どういうふうに番組スタッフに伝えていけばいいのかは、仕事をやりながらつかんでいくしかなかった。だから、最初のほうはすごく悩みました。それで、ツイッターでちょっといろいろつぶやいちゃったりして、怒られたりもしたんですが(笑)。
特に冒頭部で研究者として不満だったのは、白河法皇の面前で、清盛の“母”が矢で射殺される場面。“血のケガレ”を忌み嫌う朝廷でそのような行為が成されるなんて、あり得ないわけですよ。ドラマ上の“演出”としてはいたしかたないと、納得はしましたが。
でも、やり取りを重ねる中で、NHKのディレクターが上手に間に入ってくれて、藤本さんともうまく橋渡しをしてくれるようになった。だからそれ以降は、番組サイドに対しての不満なんていうのはなかったです。