──既得権益がはびこり、レッドオーシャンが広がる批評界よ、さようなら!ジェノサイズの後にひらける、新世界がここにある!
『約束の日 安倍晋三試論』
12年末の衆議院選挙から約1カ月、年が明けて今、改めてこの国は大きな暗礁に乗り上げてしまったな、と思っている。最初に個人的な立場を明記しておくが、僕は安倍晋三の「美しい国」的なビジョンにはまったく共感できない。その上で、個別の政策には是々非々で臨もうと考えている(例えばリフレ政策には賛成、9条改憲にも条件付き賛成、同改正案の人権についての扱いには反対、である)。
しかしそれとは別に、この選挙結果は重く受け止める必要があると考えている。例えば投票率。半ば予測できたこととはいえ、ソーシャルメディア上の、まるで再び「政治の季節」がやってきたかのような空気(実際、僕よりも若手の書き手がこう表現しているのを目撃したことがある)とは裏腹に、実際の投票率は3年前と比べても10%近く低い数字が弾き出された。自民党の大勝もまた予測されたことだが、その結果、近年インターネット上の新しいジャーナリズムに支えられることで可視化されてきた、新しい都市型リベラルの勢力が極めて微弱であることが証明されてしまったように思える。