――改正暴力団対策法や暴力団排除条例などで、シノギがしづらくなったというヤクザ。だが、時代の変化に合わせてその姿を変えていくのもヤクザである。ここでは、与党交代という新たな変革を受けて、ヤクザたちがどう変化していくのかを、某広域指定暴力団の現役幹部に聞いた――。
『本当にワルイのは警察』(宝島社新書)
──野田政権でも、田中慶秋法相が“黒い交際”を取り沙汰されて辞任しました。でも、あれは彼に限った話ではないですよね。
A氏 そりゃそうだよ。戦後の混乱期からずっと、俺たちヤクザと政治家は持ちつ持たれつでやってきた。防衛関係と沖縄の基地移設などにかかわる額賀福志郎、警察OBという立場でつなぎ役となっている平沢勝栄あたりが裏社会とツーカーなのは業界では常識だよ。
土地の開発をするにしても、そこの顔役とパイプがある俺たちを通したほうが話は早いし、必要なら実力行使もできる。まぁ、昔はダンプを突っこませるなんて露骨なこともよくやってたけど、今は企業舎弟やブレーンを使った“正当な商行為”として取り引きをしている場合がほとんどだね。
──お互いにメリットがあるのはわかりますが、政治家にとってはそれでもリスクのほうが大きいような気もします。彼らがそれを承知で交際するのはなぜでしょう?
A氏 やっぱり、俺たちの集票能力をアテにしている部分もあるんじゃないかな。ある程度のポジションにいる人間が本気を出せば、知事や県議、市議ぐらいなら、簡単に当選させられるからね。
──それでは、自民党政権になって政治と暴力団とのかかわりはどう変わっていくと思いますか?
A氏 自民党の体質は基本的に利権構造だから、俺たちとのつながりは当然増えていくと思うよ。地域対策費を出したり、公共事業が増えればそこが利権になる。結局、原発にしろ、産廃にしろ、人が嫌がる仕事をまとめていくのは俺たちヤクザなわけだしね。とはいえ、民主党だったから俺たちのシノギがキツくなってたのかっていうと、そうでもない。カタギと同じように不況のあおりをくらってたってだけで、ヤクザへの締め付けがいくら厳しくなろうが、正直、そんなに困らんからね。