――実際に自社タレントがCM仕事を取れるよう日々電通マンとお付き合いしている芸能プロダクションのマネージャーは、電通マンの仕事ぶりをどう評価しているのか? ズバリ本音を聞いてみました !!
[座談会参加者]
A…大手芸能プロマネージャー
B…大手芸能プロマネージャー
C…役者系中堅芸能プロマネージャー
電通のパワーを遺憾なく発揮した、朝日新聞との“コラボ作品”。
A 最近のCMで、僕ら芸能事務所の人間から見てすごいなっての、何かあるかな?
B 『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』の公開直前の12年8月に朝日新聞に載った、日産自動車やNTTドコモ、伊藤園などとのコラボ広告かな。朝刊の合計8面も使ってバーンと出したやつ。
A でもあれ、日産自動車はあの映画の協賛企業だからいいとして、伊藤園あたりなんてあの広告限りのスポンサーじゃん。僕には電通的なあざとさが感じられて、ちょっと興ざめだった。
C 最近、すごいCMってあまりないですよね。そもそも今ってCM自体の存在感が薄いじゃないですか。88年の大塚製薬の「ポカリスエット」から宮沢りえが、96年のドコモのポケベルから広末涼子がビッグになったみたいに、昔は業界全体にCMからスターを生み出そうって雰囲気がありましたけど、最近はまったくなくなっちゃいましたからね。
A それって、知名度の低いタレントを使うリスクを負ってでも一発当てようというクライアントや代理店がこの不況で減ったってことだよね。じゃあ、CMに関してうまくやってる事務所は?
C それはオスカープロモーションでしょう。剛力彩芽や武井咲、忽那汐里という、上戸彩の次の世代がちゃんと出てきてます。特に武井については、11年初頭ぐらいからロッテ「ガーナミルクチョコレート」や資生堂「MAQuillAGE」、日本コカ・コーラ「爽健美茶」と一気にCM露出を増やして、同時にドラマや映画にも出しまくったじゃないですか。
A ああいう同時多発的なブレイクの仕方って、カネを生みそうなクライアントや代理店の営業と早めに引き会わせておくとか、普段からあちこちにヒットのタネをまいておかなければ絶対にできない芸当だよね。
B CMに関するタレントの扱いがうまい事務所といえば研音かな。08~12年にサントリーフーズ「DAKARA」で天海祐希を「余分三兄弟」と絡ませたり、10年の大和ハウス工業「ダイワハウス」で唐沢寿明に「ダイワマンX」を演じさせたり、普通あのクラスのタレントなら嫌がりそうな企画でも文句を言わせずに出演させる。
A それは、研音がタレントに支払うCMのギャラが高いからというのもあるでしょ。
C でしょうね。じゃあ、CM制作において、この代理店の営業はこういうところがうまいとかは?
A やっぱり電通は規模が大きいから、他の代理店と比べると、営業がクライアントに対して優位な立場でものを言える印象はあるね。事務所とクライアントの間を取り持って事務所側の意見を通してくれることも。対して博報堂は、全社的に常にクライアントのほうを向いている感じで、こちらの要望をすくい上げてくれないことが多い。
B 傾向としてはそうだけど、代理店の差より、個々の営業マンの差のほうが大きい気もする。例えば、撮影中にクライアントが突然セリフの追加を要求してきて10パターンぐらい余計に撮らされそうになった時、ダメな営業ならOKしちゃうところを、優秀な営業は事務所側の気持ちを察して、「じゃ、その中の3パターンだけ」と、クライアントにブレーキをかけてくれたりする。
A まあ、そういうブレーキは基本的にキャスティングの仕事だけどね。だからこそキャスティング会社の社員には、芸能事務所からの転職組が多いわけでしょ。事務所側の気持ちがわかる人が必要だからさ。その意味でも、海千山千の事務所を相手にするキャスティングって、誰にでもできる仕事じゃない。うるさいことで有名なジャニーズ事務所の場合、CM関連の仕事はユニオンという系列会社がすべて仕切ってるけど、あそこなんか社員は女子ばかりで、まあ押しが強いのなんの(笑)。