[北海道大学大学院文学研究科教授]
櫻井義秀(さくらい・よしひで)
1961年生まれ。社会学者。北海道大学大学院文学研究科教授。宗教社会学の観点から、オウム真理教や統一教会、スピリチュアルブームの調査研究を行う。編著書に『「カルト」を問い直す』(中公新書ラクレ)、『大学のカルト対策』(共著/北海道大学出版会)など多数。
目が離せない団体【4】
オウム事件から17年、後継団体であるアレフが近年じわじわと信者数を増やしているのは、何の兆候なのだろうか――。アレフ
[注目の理由]
オウム真理教を前身に持つアレフは、引き続き信者数を伸ばしている。特に北海道支部では、勧誘上手な人物の存在により、他都府県に比べても増え幅が大きい。また、新たに入信した人の過半数が若年層であるのも特徴だが、オウム事件に目をつぶって信仰を求める動きは危険ではないだろうか?
カルト的な宗教にはまってしまう背景には、社会の複雑さに耐えられず、安易に答えを求めてしまう日本人のこらえ性のなさがあると思います。外部の情報を遮断し、自分の居心地の良い集団を維持しようとする。陰謀論を持ち出して、自分たちの考えを正当化しようとするのも特徴です。そういった意味で、最近、目立つようになってきた排他的なナショナリズムとカルトは同じ構図を持っているといえるでしょう。
公安調査庁が毎年発表している治安情勢報告書「内外情勢の回顧と展望」によると、オウム真理教が前身となっているアレフが11年に新規獲得した信者数は213人で、北海道は75人も信者を伸ばしています。これは北海道支部にいる、ある人物の勧誘方法がうまいからだとされていますが、教団全体でSNSを利用するなど、新規信者の獲得に力を入れている現状もある。また、入信した人の3分の2が35歳以下の若者であり、こういう団体に対する若者のリスク認知が乏しいことに不安を感じています。オウム事件が風化しているというのは事実であるにしても、オウム真理教を知らない人は日本にはほとんどいません。「この団体が、どういう団体であったのか」という過去の経緯は皆知っているんですよ。その上で、癒やしや充足感が得られれば社会常識だとか倫理観だとかは関係ないと考える新規信者の思考には、疑問を感じます。