――日本では政治と宗教は相互に不介入であるべきものだとされてきた。だが、実際には公明党だけでなく、多くの政党が密接につながっておりそのつながりは無視できないものになってきている──。
(絵/管 弘志)
入信いたしますので、次の選挙はひとつ投票のほうを…
■政治側
【メリット】
宗教はわかりやすい大票田!
宗教団体と結びつくことで集票を期待できる。選挙期間中の相手陣営に対するネガティブキャンペーンも含め、組織的な政治行動という意味で重要なリソースになっているようだ。政治家個人の信仰心は、関係ないケースがほとんど。
【デメリット】
宗教からの献金がスキャンダルになることも…
「新興宗教とつながっている」という事実は、露見すればそれ自体が有権者にマイナスイメージを抱かせる。場合によっては、個別の政策の実現に対して宗教団体から有形無形の圧力がかかることもあり、発言の抑止力となることも。
宗教法人法改正したら、末法! 末法! 末法!
■宗教側
【メリット】
法人非課税はおいしい利権!死守すべし
特に、有力な政治家とつながることで、宗教法人法の改正に対して圧力を加えることになる。また、記念式典や講演・勉強会などに政治家を招待して、教団の泊をつけることも可能。
【デメリット】
対立宗派との宗教闘争に発展!?
対立する宗教団体を牽制するために特定の政治家に協力する団体も少なくないが、選挙で負けると、信者が「だからあの宗教はだめだ」とネガキャンの具にされるなど、相手からの圧力を強めることになる。選挙に資金と人的資源を投入したことの見返りを得られず、結果としてそうした政治行動に愛想を尽かした信者が、離れてしまうことも。
民主党政権への失望の裏返しでもあった支持者の期待、あるいは無関係の事件報道で自身の顔写真を放送されたとして11月、TBSに対して自ら批判を繰り広げた“ネガティブキャンペーン騒動”など、先の衆院総選挙に向けて日増しに注目度を高めていた自民党・安倍晋三総裁。その母・洋子氏は仏教系新宗教「真如苑」の熱心な応援者として知られ、自身は宗教法人「生長の家」の関連団体・青年真志塾で講演を行うなど、かねてより宗教団体とのつながりが指摘されてきた。
政治家や政党と宗教団体とのつながりは、憲法により規定された「政教分離」に抵触する可能性があり、政治側がおおっぴらに認めれば、改憲論にも踏み込む必要が生じる。そのため、メディアでもタブーなものとして報道されてきたが、公明党と創価学会とのつながりは言うに及ばず、それは決して珍しいものではない。政党運営に詳しい政治記者が語る。
「信者と支持者が完全に重なっているわけではないという注釈付きですが、党単位でいうと基本的に、自民党は真如苑や神道政治連盟、民主党なら立正佼成会、崇教真光などから、政治献金を受けているほか、選挙支援や日常の政務で教団の信者がボランティアスタッフになるなどして、支援を受けています」(※特集【2】の図表参照)
一方、宗教としても「宗教団体の法人指定が許認可制である以上、政治とのつながりは避けられない」(同)という。
宗教法人法の改正が叫ばれ、改正案が取り沙汰される昨今、非課税や優遇措置を維持するには政治の力が必要であり、政治家に恩を売っておくメリットは小さくない。
特に、宗教法人税への課税が強化され、集金システムを厳しくチェックされることを宗教団体は怖れているようだ。宗教が熱心に政党を支持するのは、2008年までにまとめられた「公益法人制度改革」に反対するため、というのが大部分だ。これまで非課税であった公益法人に対して、公益認定を受けられない場合は課税を行うように改編。現状では、宗教法人への影響はないが、国家の財政が傾いている今、「宗教団体にも課税を」との声が上がってきている。
「宗教法人が非課税の理由は、簡単に言うとお布施で成り立ってるため。もともと神社・仏閣は公益性のある施設として、檀家からの維持費でなりたっていたからです。なお、宗教法人も営利事業を行った場合にはその部分は課税対象となります」(同)
これに対し宗教界側からは「宗教法人に課税が命じられれば、施設や団体の維持が困難になり、信教の自由が脅かされる」として、反対の声を上げている。
「創価学会と立正佼成会のように、普段は、同一選挙区内の対立候補を支援するなど、相反する立場でも、これには手を組んでNOを出している。ですが、新宗教のように、カリスマ的な教祖があの手この手で信者からお布施を吸い上げて私腹を肥やしているような状況となっており、当然憲法を見直すべき状態にあることは間違いない」(同)