――マンガが流通する現場にいる書店員たちには、今年のマンガ界はどう映ったのだろうか? 本当は売れてない(!?)ヒット作から、出版社との丁々発止のやりとりまで、その内情を聞いた。
【座談会参加者】
A…中規模チェーン店コミック担当
B…大規模チェーン店コミック担当
C…流通関係社勤務
A まず今年の動きから振り返りましょうか。今年はとにかく「週刊少年ジャンプ」の新作が元気だった。王道スポーツものの『ハイキュー!!』や、久々のジャンプラブコメの成功作『ニセコイ』は、『NARUTO』に迫る勢いで売れました。『魔人探偵脳噛ネウロ』でスマッシュヒットを飛ばした松井優征の新作『暗殺教室』も、うちは1巻を100冊入荷した。
C 刷部数で、出版社がどの作品を推しているのかがわかるよね。流通から見てても、普通のジャンプコミックスが5万部のところ、『暗殺教室』は、うちの入荷数から類推して20万部以上刷ってるから、集英社の本気がうかがえる。
B ただ、やっぱり今年「ジャンプ」でブレイクした作品としては、腐女子人気も高いバスケマンガ『黒子のバスケ』だね。4月にアニメが始まったら飛ぶように売れ始めて、ゴールデンウィークには品薄状態でした。2011年に「ジャンプSQ」でヒットして累計900万部を突破した『青の祓魔師』より勢いがある。
(左)『ONE PIECE』 尾田栄一郎/集英社(97年~)/420円/累計発行部数2億8000万部を誇るモンスターコミック。ゴム人間であるモンキー・D・ルフィは、海賊王となるため、“ひとつなぎの財宝”を求め、大海原へと旅立っていく。
(中央)『NARUTO』 岸本斉史/集英社(00年~)/420円/自身の体に、忌み嫌われる怪物・九尾が封印されている落ちこぼれ忍者ナルトが、自身の里一番の忍びである火影となるため、仲間たちとともに困難に立ち向かっていく。『ワンピース』と並ぶ「ジャンプ」の看板マンガ。
(右)『BLEACH』 久保帯人/集英社(02年~)/420円/高校生・黒崎一護は、ある日死神と出会ったことから、死神代行として悪霊・虚を退治することに。次第に、死神たちの住む世界までを巻き込んだ大きな戦いの運命へと導かれていく。
C 半面、『ONE PIECE』、『NARUTO』、『BLEACH』(以上、すべて集英社)といった「ジャンプ」の看板タイトルはピークを越えた感じ。『ONE PIECE』なんかも、11月に出た68巻の初版が400万部と相変わらず桁違いの発行部数だけど、前巻が405万部だからやや減少。部数減はわずかだけど、そもそも『ONE PIECE』は店頭でずっと売れ続けるタイトルだから、発売直後に売り切らなくても書店はあまり返本しない。それでも減らしたというのは、やっぱり多少勢いが落ちてるんでしょう。
B 実際うちの店でも、5月発売の単行本は、前巻の8割くらいしか売れなかった。『BLEACH』も最終章に入った55巻からは人気が失速してる感じ。55巻発売時に200ページ近くある豪華な冊子を一部店舗で無料配布したのも、てこ入れの意味があったんじゃないかな。でも、この冊子が入ってくるって連絡があったのが発売の1週間くらい前で、もうとっくに単行本の発注は終わってた。冊子が付くならあらかじめ入荷数増やしたのに、これじゃ意味ないですよ。
A でも、「ジャンプ」は『ONE PIECE』頼りでヤバいっていわれてるけど、雑誌内で人気作家の世代交代が進んでるって意味でも勝ち組。少年誌でいうと、「週刊少年サンデー」は本当にヤバいでしょう。
B マンガ大賞を取った『銀の匙』は150冊、10月にアニメ化された『マギ』(すべて小学館)は、50冊入荷するくらい人気だったけど、この2作はどっちもスクウェア・エニックスの「ガンガン」「ヤングガンガン」から引っ張ってきた作家だしね。
A 「サンデー」はAKB48とかのグラビアがないと、売り上げがガクッと落ちます。