──景気が良さそうに見えるが、実は、圧力と赤字にまみれ、本当は“ヤバい”ことになっているサッカー界。サッカー誌では絶対に書けないウラ話を関係者に集まって暴露してもらった。
[座談会参加者]
A…サッカー専門誌編集者
B…スポーツ新聞記者
C…フリーランスサッカーライター
書店の棚に並ぶサッカー専門誌。休刊・廃刊するのはどの雑誌が先か……。
──まず、最近の代表取材の雰囲気ってどうなんでしょうか?
A 選手のメディア対応でも悪い話は聞かなくなったよな。こちらの問いかけを無視して素通りするのがスタンスだった中田英寿のようなタイプはいないでしょ? 本田圭佑(CSKAモスクワ)とか香川真司って、ミックスゾーン(スタジアムの取材エリア)ではどんな対応なの?
B 試合前に限れば、本田圭佑選手は話さないときはまったく話さないですよ。ただ試合後はいつもしっかり話しますね。自分のパフォーマンスがよくなかったからとか、気分次第で話さないことがあるとか、そういうムラがあるタイプでもないですね。
C 香川もメディア対応はとてもいいですよ。ただ香川の場合はクラブでの取材が大変みたいです。
A だって世界的な名門マンチェスター・ユナイテッドだからね。あそこはプレミアリーグのクラブの中でも独特のルールを持っているクラブで、取材の規制も世界屈指の厳しさだから。
B オールド・トラフォード(ホームスタジアム)でのデビュー戦があったじゃないですか? そこで見事に初ゴールを決めたのだけど、日本から来たペンの記者(新聞や雑誌の記者)は、誰もミックスゾーンには入れなかった。テレビ局のクルーだけは、クラブに謝礼を払って、コメントの映像撮りをさせてもらったらしいけど。
A そんな大変な状況なんだ。でも、それだとペン記者は仕事にならないよね?
B あのときは日本人のペン記者が入れなかったことを伝え聞いた香川が、わざわざミックスゾーンじゃないエリアまで出てきて、コメントをしてくれたらしいんです。本人のコメントが取れるかどうかは、ペン記者にとって死活問題だからね。
C テレビ業界は景気のいい話を聞くけどさ、紙媒体のメディアはどうなの?
A そこに触れます? こっちは笑えないぐらい悲惨ですよ。まず老舗の専門誌である「サッカーマガジン」(ベースボール・マガジン社)、「サッカーダイジェスト」(日本スポーツ企画出版社)が壊滅状態ですから。ある広告代理店の出稿案内では「公称45万部」なんて記載しているけど、あんなものは大ウソで、「マガジン」は5万部割れの毎号大赤字。「ダイジェスト」も5万部割れですが、「ワールドサッカーダイジェスト」(同)の売れ行きでなんとか持ちこたえているとのこと。
C ベースボール・マガジン社は「サッカーマガジン」をどこかに買い取ってもらおうと動いているという話もあるぐらいです。確かに「マガジン」の記者は、Jリーグの取材現場で見かけなくなりました。誰が試合レビューを書いているんだろうと思って雑誌を確認したら、そもそも試合レビュー自体が掲載されてなかった(笑)。
A 専門誌が試合レビューを掲載しないってことは、サッカーが行われている現場を無視している行為に等しいですよね。
C (苦笑)。今年から注目の試合しか扱わなくなったみたいです。売れてないからなのか、J1の試合取材にも記者を派遣しなくなっている。今年のJ1は鳥栖、札幌が昇格してきたから、毎回の交通費もばかにならないんでしょうね。