――ここまで見てきた通り、繰り出されるサービスを中心に、NHN Japanという会社には一定の注目度と評価がなされている。では果たして、同業他社である、インターネット企業の社員たちの目には、どのように見えるのか? 本特集の締めくくりとして、業界内での評判を、匿名にて存分に語ってもらった──。
[座談会参加者]
A…ゲーム関連が中心のD社社員・30代
B…メルマガなどを手がけるS社社員・20代
C…ブログなどが主体のH社社員・30代
A 今回は、NHN Japanについて同業他社の社員の目から語ってほしいということなんだけど、皆はあの会社を実際どうとらえてる? やっぱり、母体が韓国の会社なので、日本の企業とは少し違うよね、という反応はある気がするんだけど。
B 僕はすごく期待してますよ。韓国資本ではあるけれど、会社ごとうまく日本にローカライズされてますよね。伝統的に日本でIT業界を語る時って、やっぱりアメリカの文脈からなかなか離れられないじゃないですか。ここ最近だと、アップル、グーグル、ツイッター、フェイスブックという感じでしたよね。その中にあって、韓国と日本の会社が一緒になって世界に広く普及するサービスを作って、大成功してるわけです。技術的には新しいことがすごく多いわけじゃないし、類似サービスもあるんだけど、ミクシィが失速してしまった今、また新しい可能性が出てきたな、と。データを見て言っているわけではないけれど、おそらくアメーバピグやアメブロのユーザー層と、LINEユーザー層は重なっている感じがします。
C あと、ガラケー向けサービスと同じニオイがしますよね。ある有名ギークが「『返事をしなきゃ』ってプレッシャーになるから」と、LINEのメッセージの「既読」表示をオフにするツールを勝手に開発したら、すぐにそれができないように運営側が仕様変更したのが象徴的な話だと思うんですけど、ネットに明るいユーザーを客とは見ていない。企業のアカウントは公式のものしか認めないのも、まさにそれ。公式サービス以外は展開できないから企業はプラットフォーマーにカネを払わざるを得ないし、ユーザーはそのサービスのみを利用することになる。だから、そういう自由度の低さが気にならないガラケーユーザー相手に、着うたという“音楽の破片”が数百円で売れたのと同じように、デジタルデータに過ぎないスタンプが百数十円で売れる、と。気軽に使える敷居の低さを演出しつつ、ギリギリのところでユーザーに自由を与えず囲い込むのがうまいんですよ。
B いわゆる“情報強者”からはあまり顧みられない、ネットユーザーにおけるサイレントマジョリティ相手のビジネスですよね。日本のIT業界を語る時ってどうしてもそのあたりが軽視されがちなんだけど、NHNもサイバーエージェントもあれだけのユーザーを集めて独自の文化を作り上げつつあるし、実際の業界内では決して評価は低くないように感じます。