2012.7.21 読売新聞西部本社のスクープ記事は、監察官室の警視からのリークで書かれたものだったが、その後、事態は思わぬ方向に転がっていった……。
日本を代表するメディア企業2社の行動が波紋を呼んでいる。社内スキャンダルを抱えた上、報道機関の生命線といえる「情報源の秘匿」まで投げ捨てるという暴挙を冒したのだ。
まずは、日本経済新聞。同社の喜多恒雄社長が東京都新宿区の高級マンションから同紙経済部に所属する50歳の女性デスクYさんと出勤する日々を送っている──「週刊文春」(文藝春秋/7月19日号)が、写真付きでこんなスクープを飛ばしたところ、日経は発売当日に同誌の広告を掲載拒否した上、同日付社会面に「本社、文藝春秋を提訴へ」といきなり反論記事を掲載して、“全面戦争”に突入。だが、この問題をきっかけに同社のガバナンスはたがが外れたように崩壊していった。文春記事の端緒となった告発文書が、日経関係者から相次いで業界内外に発信されたのだ。日経の社内事情に詳しいジャーナリストが証言する。
「1回目は文春の記事が出る前でした。『社内のモラルの低下に、多くの社員がやる気を失っています』との書き出しで、ニューヨーク総局時代の喜多さんが現地採用したのがYさんだと実名で指摘し、能力が乏しいのに2年後には日経本流の経済部長のイスが用意されていると書いています。ほかにも、前科持ちが編集局幹部に昇格したとか、部下と不倫の末に自殺に追い込んだ幹部が重用されたなどといった告発があり、“情実人事”に不満爆発で、社内はガタガタです」
それにしても、いくら経営首脳のスキャンダルとはいえ、色恋沙汰はプライベートの問題。すぐに経営の根幹を左右するような問題ではないのだから、まず慎重に社内調査すべきだったはず。ところが日経側は、文春記事の十分な検証もないまま、発売当日に「提訴へ」と書いた。しかも、日経側が出した文春への反論書の内容がふるっていた。