――世界最大のタブーとして、しばしば挙がる“ユダヤタブー”。その背景にあるのは「世界の経済と金融を動かすのはユダヤマネー」という陰謀論に端を発するが、その真相はいかなるものなのだろうか?
『真のユダヤ史』(成甲書房)
ここまでは、陰謀論の歴史学的検証をひもといてみたが、陰謀論の中でも世界最大のタブーとされているのが、ユダヤ人をめぐる報道と見る向きは少なくない。周知の通り、日本国内において最大のユダヤタブーに触れた事件は95年の「マルコポーロ事件」【註1】だろう。この事件において注目すべき点は、ユダヤ人団体であるサイモン・ウィーゼンタール・センター(SWC)の行動が抗議活動だけにとどまらず、文藝春秋が発行する全雑誌への広告出稿のボイコット呼びかけにまで発展したことだ。この事件に深く関わったジャーナリストの木村愛二氏が文藝春秋の関係者に聞いた話では、「広告出稿のボイコットに加えて、執拗な電話攻勢も行われた。また、国内にある某宗教団体からの抗議、その団体が動かした政治家からの圧力など、想像を絶するすさまじさであった」という。
それにしても、ユダヤ人および彼らの団体が、日本のメディアに対してもこれほどまでに力を持てるのはなぜなのか?
まず、ユダヤタブーにおける実行機関となるのがユダヤ人団体だが、これらの多くはアメリカに活動拠点を持っている。その中でも有名な団体は、「マルコポーロ事件」のSWC、アメリカ最大の名誉毀損防止同盟(ADL)などが挙げられる。社会活動家であり、ユダヤ資本に関する著述を数多く手がける安部芳裕氏によると、これらの団体はそれぞれに独自の監視網を持ち、反ユダヤ主義的な報道を素早くキャッチするという。