──スポーツライターとして長きにわたり球界を見続けてきたジャーナリストは「今回の不祥事は巨人軍の驕り」だと苦言を呈す。その根底にあるものは何か? 特別視される巨人軍の闇を語る。
『正力松太郎』(日本図書センター)
巨人をめぐる今回の一連の不祥事は、巨人という球団が何があっても強くあり続けなければいけないという自縄自縛に陥っていることと同時に、社会がだんだん変わってきているのに、巨人だけが従来の体質のままであり続けようとしているところに根本的な問題があると思います。
例えば今パ・リーグの中継というのは、「プロ野球24」というサービスでモバイル配信されています。その運営会社であるパシフィックリーグマーケティングという会社は、パ・リーグの6球団がお金を出し合って設立されたもの。そして利益の配分は、アクセスされた試合のチームに、公平に分配されるようになっています。
それに対して、セ・リーグはどうかというと、いまだに巨人戦がテレビで中継されればテレビ局や視聴者はついてくるという姿勢なわけです。その意識は、地上波で巨人戦を放映しなくなった今に至っても変わらない。それはそもそも、現在のプロ野球というのは、読売新聞を育て上げた当時の社主・正力松太郎が、国民的人気スポーツにまで発展させたという歴史を持っています。こうしたことから、「巨人軍であらずんば人にあらず」という時代を、いまだに受け継いでいるわけです。「我々巨人がリスクをとってプロ野球界を育て上げたのだから、ほかの球団は黙ってついてこい」と。だから例えば04年のプロ野球再編問題の時も、プロ野球全体を巨人軍に従わせて1リーグ制に移行しようとしたんです。