――では、実際に実業団陸上部で日々五輪を目指すマラソン選手たちは、それぞれのスポンサーである企業からの待遇をどう感じているのだろうか? 本音と不満を語ってもらった──。
【座談会参加者】
A…地方の実業団所属。20代の現役選手。
B…30代の元実業団選手。現在は一般企業勤務。
C…30代の元実業団選手。現在は大学コーチ。
『瀬古利彦 マラソンの真髄』(ベースボールマガジン社)
A 僕は大学からのスカウトを受けていたけど、家の都合で高卒で実業団に入ったんです。でもまさか、こんなに給料が安いとは思わなかったですよ。同級生にドラフトの下位指名でプロ野球に入った友人がいるんですが、契約金を含めるとトリプルスコア以下でしたからね(苦笑)。
B 正社員採用か契約社員採用かでも、給料は全然違うよね。日清やトヨタ、エスビー食品、旭化成あたりの強豪は契約採用が主体。その分、給料を多く出して強い選手を集めてるし、選手は会社の業務もする必要がない。契約の場合、成績を残せば報奨金が数十万単位で支給されるから、やりがいはあったよ。ただし、成績不振になると、すぐクビ切られるけど。
C そのあたりのジレンマはありますね。大卒で実業団に正社員として入ったら、給与は一般職と同じくらいの水準でした。正社員でも報奨金が出る場合はあるけど、契約選手に比べると桁がひとつ小さい。一般職がもらえる残業代にもならないので、手取りでいったら我々のほうが少ないくらいだったかも。
A 報奨金は、チームによって全然違うみたいですね。うちは社長が陸上好きなので、オリンピックでメダルを取ったら数百万円っていわれてますよ。まあ、僕はまったく縁がないですが(笑)。オーナー社長の場合、そういう面で優遇されることはありますね。ただ、その分、成績が悪い時は練習に口を出してきたりするし、社長の一存でチームが続いている部分があるので、代替わりした時とかは怖い。あっさりチームが潰されるかもしれないですから。
B あと、あまり知られてないのが、食費とか治療に対する手当。結構企業によって差があるらしくて、これをどれだけちゃんと出してくれるかで、その企業がどの程度真剣に取り組んでいるのかが見えてくるよね。
C 僕がいたチームは、治療への手当はちゃんと出してくれたし、寮に入っていたので食事も週5日分は出ました。専属の栄養士もついていましたよ。これくらいやってくれるのは、マシなほうみたいですね。