サイゾーpremium  > 連載  > 小原真史の「写真時評 ~モンタージュ 過去×現在~」  >  写真時評~モンタージュ 現在×過去~【04】
連載
写真時評~モンタージュ 現在×過去~

カメラばあちゃんと国策のダム

+お気に入りに追加
1208_shashin02.jpg
花盛りなのに
1208_shashin03.jpg
家壊しを見守る村人

「節電の夏」がまた始まる。1年以上の対策期間を無為に過ごし、関西電力は大飯原発の再稼働にこぎつけた。福島第一原発事故にともない自然エネルギーの見直しがなされているようだが、巨大ダムによる水力発電などは建設の過程で膨大なエネルギーを必要とするから、事業自体がいわゆる「省エネ」とはかけ離れたものになる。

 高度経済成長期の電力と工業用水需要の増加に伴い、全国各地にダム計画が持ち上がり、岐阜県の徳山村にも白羽の矢が立った。「徳の山」という名前の通り山の恵みによって縄文期から連綿と続いてきた村であったが、雨量が多く、1000メートル級の連山に囲まれているためにダム建設には理想的な地形とされた。故郷の村が消滅の危機を迎えた時、その姿をせめて写真で残そうと、それまで触ったこともなかったカメラで村を撮影し始めたのが、農業のかたわら民宿を営んでいた増山たづ子だった。「カメラばあちゃん」と呼ばれて親しまれた彼女は、1977年から村の終わりを撮影し続けたが、2008年の徳山ダムの完成を見届けることなくこの世を去った。ありふれた記念写真にも見える彼女の8万枚にも及ぶ写真は、村全体をダムの底に沈めようとする国策に対する出来うる限りの抵抗だったはずだ。雪深い山間で助け合って生きてきた住民たちは、賛成派と反対派に分断され、「下流の人たちのために」「お国のために」などと自分に言い聞かせて離村した者も少なくなかったという。写真の下に入れられた日付は、この村が地図から消えた87年までのカウントダウンのようにも見える。

ログインして続きを読む
続きを読みたい方は...

Recommended by logly
サイゾープレミアム

2025年5月号

新・ニッポンの論点

新・ニッポンの論点

NEWS SOURCE

インタビュー

連載

    • 【マルサの女】名取くるみ
    • 【笹 公人×江森康之】念力事報
    • 【ドクター苫米地】僕たちは洗脳されてるんですか?
    • 【丸屋九兵衛】バンギン・ホモ・サピエンス
    • 【井川意高】天上夜想曲
    • 【神保哲生×宮台真司】マル激 TALK ON DEMAND
    • 【萱野稔人】超・人間学
    • 【韮原祐介】匠たちの育成哲学
    • 【辛酸なめ子】佳子様偏愛採取録
    • 【AmamiyaMaako】スタジオはいります
    • 【Lee Seou】八面玲瓏として輝く物言う花
    • 【町山智浩】映画でわかるアメリカがわかる
    • 【雪村花鈴&山田かな】CYZOデジタル写真集シリーズ
    • 【花くまゆうさく】カストリ漫報
サイゾーパブリシティ