──日本国内ではなかなか報じられないトヨタの関連企業を相手取った労働争議や過労死事件などの中から、特に話題になったものをまとめた。
『トヨタの闇』(ちくま文庫)
トヨタ関連会社で起こった労働争議。そのキーワードを列挙すると、過労・パワハラ・うつ病・労災隠し・偽装請負・ピンハネ・解雇。要は、日本中で蔓延する労働問題が、トヨタ関連企業に詰め込まれている。
利益追求のためには、労働者や下請け・孫請けの犠牲は当然とする思想とシステムの発信源がトヨタだともいえるのではないか。99%の犠牲によって1%が大儲けする構図となっている。
■トヨタ本体 内野健一氏過労死事件
02年2月、トヨタ自動車で働いていた内野健一氏(当時30歳)が、工場内で就業中に倒れて死亡。月144時間の残業もさることながら、「創意くふう提案」【註1】「QCサークル」【註2】などトヨタ独自の活動は、“自主活動”であり業務ではないとトヨタは主張。しかし、遺族である妻の博子さんによる労災申請を求める裁判で内野さんが勝利し、07年11月に判決が確定して、大きな反響を呼んだ。
■デンソー パワハラ過労裁判で現役社員が勝利
「使い物にならない人はいらないよ」と同僚の前で公然となじられ、月100時間超の残業で駐車場から社屋まで歩けないほど疲弊した、トヨタの有力グループ企業デンソー社員(当時42歳)が、デンソーと出向先のトヨタに損害賠償を求めた裁判で08年10月に勝利。原告の支援者によると、現役社員での勝利は初めてだという。
■ジェイテクト パワハラうつ病の休職社員の復職を拒否
密室で上司にバンバンと机を叩かれるなど常態化するパワハラと長時間労働でうつ病になり休職した田中光太郎氏(当時32歳)が、病気が回復して復職を求めたものの会社が拒否。さらに労働委員会のあっせんも受け付けなかったため、09年7月、名古屋地裁に提訴。11年10月に田中氏の勝利和解になった。