サイゾーpremium  > 特集  > 企業裏事情  > 【東電】による広告支配で原発報道が歪曲!?

──ネットを中心とした言論空間では、電力会社の広告出稿により批判記事が封じられているという言説が流れているが、果たしてそれは正しいのだろうか? 広告代理店関係者、現役の新聞記者らの弁からその構造、さらには原発の政治利用という側面を考えてみたい──。

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『東電帝国』(文春新書)

「新聞・テレビなど大手メディアは、電力会社から多額の広告費をもらっているがゆえに、原発について本当のことを伝えていない」

 福島第一原発事故が起こるや、このような言説がツイッターを中心に流れ始め、リツイートによって瞬く間に拡散していったことは、記憶に新しいだろう。

 11年5月13日に行われた東京電力の清水正孝社長(当時)の国会答弁によれば、同社の09年度の広告費は91億円。競争相手のいない地域独占企業でありながら、これだけの金額を使って何をアピールしていたかといえば、「原発の安全性、エネルギー効率の優位性、環境性といったもの。例えば、東京電力のCMにアナウンサーの草野仁、中部電力のCMには経済評論家の勝間和代、弁護士の北村晴男といった文化人が登場し、広告塔を務めていた」(大手広告代理店社員)。

 賢明なサイゾー読者であれば既知だろうが、メディアは広告主の意向に沿うコンテンツ作りを求められており、広告主の批判はご法度。だとすれば、東電をはじめとする電力会社の広告は、メディアの原発批判を封じる役割を果たしてきたことになる。もちろんこれは、新聞やテレビといった大手メディアに限った話ではない。前出の広告代理店社員が声をひそめる。

「91億円もの広告費は、広報部経由による、新聞やテレビといった大手メディアへの広告料。で、雑誌の場合は、総務部が窓口になります。本来大手企業では、総会屋やコワモテのクレームは総務部が引き受けることになっているのが常識ですが、東電にとって雑誌というのはいわば、彼らと同じ扱いだということ(苦笑)。まあ、東電の場合、年間10億円の使途不明金があるといわれていますが、こうしたお金が総務部を通じて、政治献金や雑誌メディアに流れるという構図ですね」

 老舗の経済週刊誌DやTも例外ではないと代理店社員は続けるが、こうした広告主との関係はメディアにおいては常識で、広告主の横やりで批判記事を差し止めるのは日常茶飯事だという。

「大手経済系新聞ではスポンサー企業におもねって、株価が上がるような記事作りをすることすらあるようですから、メディアの公平性などあってないようなものなのです。原発関連でいえば、まったく売れてないのになぜか廃刊にならないSというエコロジー系雑誌がありますが、これは東電がバックについている、原発を推進する隠れた御用メディアなんですよ」(同)

 現在は大っぴらな原発推進広告は姿を消しているが、広告費とは別の会計で、電力会社からメディアに以前から金が流れ始めていたということだ。それでいて電気料金値上げを推進しようとしているのだから、自家撞着も甚だしい。

 こうした中、3・11直後には、原発事故が起こっているのに東京電力の原発広告が掲載されてしまい、混乱を来したメディアもあったようだ。「週刊朝日」(朝日新聞出版)もそのひとつ。原子力リサイクルをPRする広告の掲載の取り消しが間に合わず、版元の朝日新聞出版では、抗議の電話を受けた場合は、すべて広告部の担当者に回すようにという指示と共に、想定問答集が社内メールで全社員に送付されたという。

 冒頭のように、こうしたメディアに対する疑心暗鬼が広がったのが3・11後のネット空間だったワケだが、「ニューズウィーク日本版」(阪急コミュニケーションズ)副編集長の長岡義博氏は当時、「『安全デマ』の深すぎる病根」や「震災取材はどうあるべきか」といった記事で、その“雰囲気”をこう解説した。

「新聞やテレビには、本当に原発は危険なのに、安全だと“安全デマ”を垂れ流していると批判が浴びせられた。その一方で、批判された記者や学者は、相手側を“危険デマ”だと応酬した。原発事故後しばらくして、東電社員の被ばくの深刻さを否定する記事を書いた朝日新聞記者と評論家の東浩紀氏がツイッター上で議論したのはその典型的な例で、どこまでも両者の溝は深まるばかりだった。社会学者の宮台真司氏は原発情報を積極的にリツイートしていたひとりだったが、それは東電や政府の発表は愚民政策に基づいて真実を伝えていないという考えに基づいたものだった──」

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