――石原慎太郎東京都知事が「都が尖閣諸島を購入する」と突如発表したのは、4月16日。場所は、米国ワシントンの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」主催のシンポジウムだった。
『黒い都知事 石原慎太郎』(宝島社)
「この講演で尖閣諸島購入を発表することは、2011年からの既定路線。米国の対中政策にも影響力を持つとされるヘリテージ財団の後ろ盾がある形で発表することで、国民や民主党政権のみならず、中国に対して、強いインパクトを与えたかった。案の定、国内は大騒ぎし、中国は『違法で無効なことだ』と反発し、国際的な議論として波紋を広げることができた」(全国紙社会部記者)
だが、この石原氏の言動は「度の過ぎたパフォーマンス」と喝破するのは、都が購入するとした尖閣諸島(魚釣島、北小島、南小島)の所有者である埼玉県の実業家・栗原國起氏を知る人物A氏。A氏は、「石原都知事は、さもワシントンに行く直前に購入交渉が基本合意に達したために、あの場で発表したというニュアンスで話をしているが、交渉はそんな段階ではない。公益性の高い問題とはいえ、購入価格やスケジュールを先に公にして、事を進めようというのは、交渉ごとの原則に反するのではないか」と、違和感を唱える。