──総合出版社のソフトバンク クリエイティブやネットニュース大手の「ITmedia」など、ソフトバンクグループはメディア事業においても、その存在感を誇示している。しかし、そこでの報道に親会社であるソフトバンクの意向が影響してくることはないのだろうか? ソフトバンクが有するメディアの中立性を検証してみよう──。
ソフトバンク メディアマーケティング ホールディングス株式会社
設立:2005年 資本金:1億円(2009年7月1日現在) 従業員数:非公開
ソフトバンクの出版部門から派生したグループ企業。グループ内のメディア企業の持ち株会社として経営支援などを行っている。代表取締役を務める土橋康成氏は、ソフトバンク黎明期からのたたき上げメンバーで、関連企業社員によると「孫正義氏からは、いじられキャラとして愛されている」という。
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【WEB】
アイティメディア株式会社
設立:1999年 資本金:16億2100万円 従業員数:174名(共に2011年12月末現在)
[主要メディア] ITmedia/ @IT/ Business Media 誠/ ねとらぼ など
ソフトバンクグループ初のオンラインメディア企業であり、現在もその代表格といえる。当初は米ニュースサイト「ZDNet」の日本版を運営していたが、2004年に「ITmedia」へと名称を変更し、社名もソフトバンク・アイティメディアへ。05年には同じくIT専門メディアを運営するアットマーク・アイティと合併し、現在の社名になった。
【出版】
ソフトバンク クリエイティブ株式会社
設立:1999年 資本金:1億円(2011年6月27日現在) 従業員数:187名(2010年3月時)
[主要ジャンル] 一般/ ライトノベル/ コンピュータ など
企業としての歴史は浅いが、81年に生まれたソフトバンクの出版部門が母体となっている。OSや技術解説書がもともとの専門分野だったが、PC関連書籍の需要が低下した現在では、ビジネス書などの一般書籍やライトノベルといったジャンルに力を入れ始め、総合出版社へとシフトしている。
通信事業やヤフーなどのポータルサイト運営のイメージが強いソフトバンクだが、その傘下にはニュースサイトを運営するアイティメディアや出版事業を手がけるソフトバンク クリエイティブといったメディア企業も有している。本来メディア事業とは社会的な影響力が大きい分、中立性を求められる事業でもある。ソフトバンクという巨大な企業の傘下で、こうしたメディアの中立性は本当に保たれているのだろうか?
そもそもソフトバンクのメディア事業は、その誕生から経営戦略の一環としてスタートしている。孫正義のルポ『志高く 孫正義正伝』(実業之日本社)によれば、ソフトバンクがメディア事業を始めたきっかけは、自社の広告を入れる媒体を確保できなかったことだという。ソフトバンク創業初期の1980年代、国内にはすでにアスキー(現アスキー・メディアワークス)の「ASCII」をはじめ、PC雑誌が複数存在していた。孫氏はそれらに広告出稿を持ちかけたのだが、一様に拒否。なぜなら、当時の出版各社には、ソフトウェアの流通事業に乗り出す計画があり、競合となるソフトバンクを締め出したいという意図があったからだ。それならばいっそ「自社で広告を出せる雑誌を作ってしまおう」という発想で81年に生まれたのが、NECのPC-9800シリーズの専門誌「Oh! PC」(ソフトバンクパブリッシング/現在休刊)などの雑誌群である。このとき立ち上げた出版部門が、現在のソフトバンク クリエイティブなどにつながっている。