──批評家による禁断のアーティスト本、大宅賞作家が選んだ禁忌な一冊、さらには、ネット発のカリスマバンドメンバーから人気グラビアアイドルまで、今年の賢人たちが選んだヤバい本を一気にレビュー!
上原善広(うえはら・よしひろ)
73年、大阪府生まれ。フリージャーナリスト、ノンフィクション作家。大阪体育大学卒業後、中学校非常勤講師などを経て、取材・執筆を開始。主に自らも育った被差別部落をテーマに活動を続け、10年に『日本の路地を旅する』(文藝春秋)で第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。(写真/新潮社)
■落語家、小説家の壮絶な生きざまと水木しげるの知られざる裏面史
まず紹介したいのは、上方落語家・桂雀々さんの自叙伝『必死のパッチ』【4】。バラエティ番組のレポーターとして、関西出身者なら誰もが顔を知っている彼の、壮絶な半生が描かれています。その内容は、『ホームレス中学生』(ワニブックス)の比ではありません。借金苦により母が逃げて、父が家を出て、雀々少年は近所の人のお世話になりながら、中学1年生でひとり暮らしを始める。そこから落語に出会うまでの話です。