『経済は格付けで動く』(中経出版)。
──前段では、リーマン・ショック以降、主に日本における格付け会社の動向をリポートした。そこで本稿では、約100年に渡る格付け会社の歴史を追い、その間に格付け会社が犯してきたさまざまな"ミス"を通して格付け会社の存在意義を問うてみたい。現在の金融市場において、格付け会社が果たすべき役割とは?
格付付け会社にまつわるさまざまな事件を見ていると、「いち私企業が、会社や国の将来を予測して格を付けるなんて、無理があるんじゃないの?」と感じる方も多いのではないだろうか?「この会社は大丈夫!」と太鼓判を押したり、逆に「この会社は信用できない!」と警告したり、それによって巨額のカネが動き、投資家や起債者(債券の発行者である国や企業)たちの運命はもちろん、世界経済の運命を動かすのである。たったひとことで大企業が倒産し、世界中の人が路頭に迷うかもしれないのだ。
しかし、前ページでも述べた通り、格付け会社による格付けは、本来的には単なる「予測」にすぎない。事実、『経済は格付けで動く』(中経出版)などの著作がある日本大学経済学部教授・黒沢義孝氏は、次のように述べる。