2011年10月号 COMICクロスレビュー
■「ITAN」好調記念!? 注目シリーズの幕開け
『昭和元禄落語心中』(1巻)
作/雲田はるこ
掲載/「ITAN」(講談社)
価格/590円 発行日/7月7日
刑務所を満期出所した男が、その足で向かったのは寄席。慰問で見事な落語を聞かせた噺家・八雲に弟子入りするためだ。八雲はぼさっとした彼を"与太郎"と名づけて連れ帰る。家には、八雲の同期・助六の忘れ形見・小夏が。紆余曲折を経て与太郎は正式に弟子入りし、小夏と共に噺家を目指す。話題のコミック誌「ITAN」連載の注目作。
【ライター・高野評】
★★★★★★★★★☆
これぞまさに真打ち、歴史的作品!
まさに真打ち登場。ものすごい作品だ、ということが、読み進める自分の心臓の動きでわかる。愁いを帯びた画の魅力もさることながら、特筆すべきは「音」だろう。爪弾く三味線に小唄、幕切れの太鼓の音、そして忘れがたい江戸訛りのセリフの数々──確実に寄席に行きたくなる。もちろん物語は秀逸。序盤から嵐の予感を孕み、孤高の名人八雲はもとより、彼と複雑な愛憎でつながる小夏からも目が離せない。これが第1巻だなんて。歴史的作品の幕開けだ。