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宇野常寛の批評のブルーオーシャン 第16回

『リトル・ピープルの時代』

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──既得権益がはびこり、レッドオーシャンが広がる批評界よ、さようなら!ジェノサイズの後にひらける、新世界がここにある!

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『リトル・ピープルの時代』

 7月28日に、この1年半ずっと書いてきた本がやっと出る。本連載の近況欄でもたびたび取り上げているのでご存じの方も多いだろうが、タイトルは『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)だ。「リトル・ピープル」というのは村上春樹の『1Q84』に登場する超自然的な存在だ。そしてこの本では春樹がこの「リトル・ピープル」という概念に込めたものを考えるところから出発して、徐々に現代日本のポップカルチャー分析を展開していくというものだ。400字詰め原稿用紙で書き下ろし600枚以上、末尾に「補論」として採録した原稿を入れると800枚以上に及ぶ、やたらと長い本になってしまった。実は執筆依頼を受けたのは前著『ゼロ年代の想像力』がまだ「SFマガジン」に連載中だった2007年の末のことだったので、企画自体はもう4年近く続けてきたことになる。

 こんな膨大な時間と枚数をかけて僕が論じたこと、それは現代日本の物語的想像力が失いつつある「巨大なもの」への想像力を取り戻す手がかりだ。

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