──趣味の細分化が進み、ますます男女の垣根がなくなりつつある"マンガ"。いくら売れなくなってきているとはいえ、マンガ大国日本の底力は健在です! 何を読んだらいいかわからない? ならばまずはこれを読め!
2011年8月号 COMICクロスレビュー
■浦沢・長崎コンビの偽史ミステリー
『BILLY BAT』(6巻)
作/浦沢直樹 ストーリー共同制作/長崎尚志
掲載/「モーニング」(講談社)
価格/630円 発行/5月23日
1949年、冷戦下のアメリカで、コウモリが活躍するアメコミ「BILLY BAT」を描いて人気の日系マンガ家、ケヴィン・ヤマガタ。同作の、日本のマンガ作品との類似性を指摘されたケヴィンは日本に渡り、そこから彼は世界を揺るがす巨大な陰謀に巻き込まれていく。『20世紀少年』の浦沢+長崎タッグによる長期連載。
【脚本/演出家・麻草評】
★★★★★★★☆☆☆
薄幸女フェチとしての浦沢作品
予測不能の展開や、世界規模の大風呂敷ばかりが話題となる長崎&浦沢作品の真の魅力は、薄幸女フェチだ。1巻の「下宿の窓際で月をバックに立つ裸の娼婦」もかなりのインパクトだったが、白人と結婚した黒人妻を南部に叩き込み、オズワルドの妻に片言の英語で死亡フラグを立てさせるに至っては恐怖すらおぼえる。6巻で新登場する、男運の最悪な真面目少女の今後も不安。喜んで読んでいる諸氏は、己の薄暗い欲求を自覚してみよう。