――黒人兵と結婚し米国へ渡った祖母、日本で毎日いじめられた黒い肌の母という、ジェロのルーツが生々しくつづられた『演歌は国境を越えた』。□□□の元メンバーで気鋭の音楽ライター・南波一海が、同書についてジェロ本人に話を訊いた。
小堺正記著『演歌は国境を超えた』は岩波書店より発売中(写真=細倉真弓)
『演歌は国境を越えた──黒人歌手ジェロ 家族三代の物語』は、ジェロが日本で演歌歌手としてスターダムを駆け上がっていくプロセスに重ね、日本人の祖母・多喜子さんと母・晴美さんの苦難を描いたノンフィクションだ。
多喜子さんは進駐軍の黒人兵と結ばれてアメリカへと渡ったものの、望郷の思いから美空ひばりなどの演歌を聴く日々。横浜に残された晴美さんは黒い肌ゆえに毎日いじめを受け、それに耐えかね、ついに渡米。この2人の女性が送った人生における偏見や差別がつづられる中で、ジェロが演歌歌手を目指し、やがて日本を目指す(いや、日本に戻ってくるというべきか)という、実に不思議な巡り合わせが描かれる。