――エンタメ小説の世界では、本屋大賞に押されっぱなしの直木賞。2002年の下半期に起こった、横山秀夫の落選をめぐる騒動(選考後に林真理子が、作品の設定を批判したが、後に指摘された部分に矛盾はないことが判明。横山はその後、直木賞と決別)では、賞そのものの信頼にミソをつけた。また、最新の受賞作『漂砂のうたう』(木内昇著・集英社)、『月と蟹』(道尾秀介著・文藝春秋)は中ヒット止まりで、関係者は頭を抱えている。もはや文学賞の最高権威とは呼べず、伊坂幸太郎に辞退されるなど力のある作家からはそっぽを向かれている始末だ。
画像は『月と蟹』/文藝春秋
一方で、世間的にはいまだに高いブランド力をキープしているのも事実。文壇での政治に熱心な編集者や作家にとっては、自分の息のかかった若手に是が非でも獲らせたい賞だ。