「反原発」作品をアーティストたちはどうとらえているのか? 原発関連の映画を製作する鎌仲ひとみ氏、「反核」イベントを企画するアートディレクター・若野桂氏、「反原発REMIX」を配信したラッパー・ECD氏に、自身が影響を受けた「反原発」作品について語ってもらった。
──かねてより原発をめぐる映画を撮り続けてきた鎌仲ひとみ氏に、原発問題の本質に迫るための作品を聞いた。
【1】『アトミック・カフェ』(1982年)マイケル・ムーアの師匠筋によるドキュメンタリー。【2】『サクリファイス-犠牲者』(2003年)チェルノブイリ原発事故処理業者の、その後の苦しみを明らかにするドキュメンタリー。【3】『ナージャの村』(1997年)写真家・本橋成一の初監督作品。放射能汚染された村と、そこに住む人々を映している。【4】『アレクセイと泉』(2002年)汚染された村にあって、なぜか放射能が検出されない奇跡の泉。その泉とともに暮らす人を通して"本当の豊かさ"を問いかけるドキュメンタリー。【5】『東京原発』(2004年)東京に原発を誘致しようとする都知事の発言をきっかけとして巻き起こる騒動を描いたパニック・サスペンス。【6】『ミツバチの羽音と地球の回転』(2010年)祝島の反原発運動とスウェーデンのエネルギー政策から、未来のエネルギーを考える。
日本で原発問題を描いた映像作品は多くありません。海外では、核兵器に関するさまざまな映像アーカイブをサンプリングして、核兵器推進プロパガンダの恐怖を描いた『アトミック・カフェ』【1】や、チェルノブイリ事故処理業者の現在を追った『サクリファイス─犠牲者』【2】など、かねてから核にまつわる作品が活発に製作されていました。しかし、日本では土本典昭監督による原発に関する新聞記事をまとめた『原発切抜帖』や、本橋成一監督によるチェルノブイリに生きる人々の日常を撮影した『ナージャの村』【3】、『アレクセイと泉』【4】といったドキュメンタリーがわずかにあるばかりでした。日本で原発を扱ったフィクションはほぼ皆無ですが、原発の正確な情報を伝えながらエンターテインメント作品として成立している『東京原発』【5】がおススメです。