――科学技術史が専門の、中島秀人・東工大教授に、今後あるべきエネルギー環境について話を聞いた。
赤外線のほとんどをブロックし、断熱能力も非常に高いという「スーパーウインドウ」によって作られた温室の内部。(写真/中島氏提供)
東日本大震災の影響による電力不足を受けて、企業・家庭への節電が呼びかけられていますが、確かにある研究では、かなり努力すれば全体で15%ぐらいの節電は可能、という結果が出ています。しかし、15%というラインを超える節電をしようとすると、途端に達成が難しくなってしまう。現在のエネルギー消費の構造では、そのあたりが限界だということです。
つまるところ大切なのは、現在の莫大なエネルギー消費の構造を維持しつつ、その枠内でエコや節電を心がけてやりくりすることではなく、エネルギー消費のメカニズム自体を根本的に変えることなんです。というのも、建築物の構造やエネルギーシステムなどを現在の技術力で整備し直せば、無理にエコなど意識しなくても、そもそもさほどエネルギーを必要としない社会を実現できてしまうからです。
その一例が住宅です。「エネルギー白書2010」によると、日本の家庭内で消費される全エネルギーの半分以上を占めているのは、実は暖房(24.3%)と給湯(29.5%)で、夏場の電力不足の要因としてやり玉に挙げられる冷房はわずか2.1%にすぎません。ということはつまり、暖房と給湯に使う分を抑えれば、住宅に関するエネルギーは今ほど必要なくなるということです。