自主規制に引きこもらず、さらなる議論と発信を
『非実在青少年〈規制反対〉読本』
荻上 「本当は」多面的な住民益、を可視化することこそ政治の役割ですからね。例えば今年11年は、ペット販売のルールを定める通称「動物愛護法」の見直しが予定されています。同法をめぐる議論上では、無責任な飼い主から動物たちを守ろうという目的意識の下、ペットショップでの深夜販売の禁止や売りに出す月齢の制限といった規制が、動物愛護団体などの後押しで進められています。もちろん、批判を受けるペット業界側としては、業界の自助努力への評価を求めながら規制そのものは最小化したいという思惑もあります。しかし「ペットの廃棄を減らす」「ペットの殺処分件数を減らす」「悪質なブリーダーを締めだす」といったような目的は合致しているため、産業側も「何がなんでも規制反対」というわけでもない。
動物愛護法をめぐるブリーフィングシートや議事録などを見ると、具体的議題が存在すること、そして「対立する双方が定期的に話し合う場所を10数年持ち続けていること」の意味を考えさせられます。少なくとも取材をしてみると、マンガ規制条例よりも一歩進んでいるという気持ちにさせられた。マンガ規制条例の場合、僕らも尊敬する年長ロビイストの顔ぶれが数十年前から変わっていないこともまた、僕ら世代の反省点です。長期的なロビイングをもって、応答の場を創り上げていれば、違った展開がありえたのかもしれません。