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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第10回──【NOVEL編】

繊細で高級だけど、退屈で冗慢な芥川賞受賞作『きことわ』

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──"ベストセラー"のハードルが下がる小説界に残された小さな希望......そんな良質な小説だからこそ! ここでは愛ある批評を捧げます。

2011年4月号 NOVELクロスレビュー

■芥川[1]風俗通いの中卒私小説家

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『苦役列車』
作/西村賢太
発行/新潮社
価格/1260円 発行日/1月26日
舞台は昭和61年。友人ナシ恋人ナシ、中卒で日雇い労働者で収入は日に5500円、楽しみはカップ酒……と、荒んだ生活を送る19歳の貫多。そんな彼にも、時として日々に変化は訪れる──。徹底してクズのような男を主人公にいくつかの私小説を書き、ここ数年注目を集めてきた作者。『どうで死ぬ身の一踊り』『小銭をかぞえる』に続く3回目のノミネートで芥川賞受賞。

【ライター・江南評】
★★★★★★★★☆☆
ジャンル「私小説」の強さを示す
日本文学における「私小説」というジャンルの強さを示す一作。著者は芥川賞受賞後に、同じく候補作だった小谷野敦『母子寮前』を「この作品には負けたと思った」と評したが、ともに王道的私小説とはいえ、本作は自己を笑いのめしキャラクター化してみせた。なにより主人公・貫多の、女(と風俗)に対する執着が笑えて仕方ない。伝統などしらぬ読者層も獲得できた理由か? 芥川賞受賞を契機にどう作風を変え、自己模倣を回避するか、今後の展開が楽しみ。

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