──昨夏の東京都青少年健全育成条例改定騒動以降、マンガにおける性表現のあり方が問われている。今の少年マンガは規制推進派の反発を受けるほど過激なのか 同ジャンルにおける性表現のタブーの変遷と、最新形を探る。
『サルでもわかる都条例対策』。さりげなく大阪府の青少年健全育成条例も一部改正されていることにも注目です。
2010年12月15日、東京都議会本会議において「東京都青少年健全育成条例改正案」が可決・成立。「強姦等の著しく社会規範に違反する性交等を、著しく不当に賛美・誇張」するマンガやアニメの一般作品(成年指定マークが付かないもの)が販売規制されることになった。この都条例の可決を受けて、小学館や集英社、講談社など、マンガの版元である大手出版社10社が、都主催の「東京国際アニメフェア」への参加ボイコットを表明するなど、当然ながら出版業界から大きな反発が起こっている。
こうした出版業界と行政の表現をめぐる対立は、1950年代半ばに起こった悪書追放運動に端を発しているが、以降も、「マンガは子どもに悪影響を与える」という観念から、たびたび批判のやり玉に挙げられてきた。子どもの目に触れる機会が最も多いだろう少年誌の掲載作品についても、その表現が問題視されてきたケースは多い。マンガにおける性表現が過激になっていた70年代には、永井豪の『ハレンチ学園』【1】(集英社「週刊少年ジャンプ」掲載)や、手塚治虫の『やけっぱちのマリア』【2】(秋田書店「週刊少年チャンピオン」掲載)などに、各地のPTAや教育委員会から批難が続出。後者は青少年に向けた性教育目的で描かれた作品でもあったが、福岡県で有害図書指定を受けている。同じく手塚治虫の作品では、「週刊少年キング」(少年画報社)に連載されていた『アポロの歌』【3】のセックスシーンが問題となり、神奈川県で有害図書指定を受けた。