──夢見る小学生女子たちには、今も昔も欠かせない少女コミック誌「りぼん」。そんな同誌に、2010年、女性同士の恋愛を描いた"百合"作品が登場し、話題になった。まさか"百合"需要は、小学生にまで広がっている? また、一般誌に普及する百合のタブーとは?
『ブルーフレンド』より美鈴が歩にふいにキスをするシーン。「りぼん」の"キスまで"というルールが同作品にも反映されている。 (C)えばんふみ/集英社りぼんマスコットコミックス
女性同士の恋愛や、それに近い友愛を題材にした作品のジャンル「百合」。10年に実写映画化もされたライトノベルシリーズ『マリア様がみてる』(集英社)をきっかけに注目されるようになり、近年、書店によっては専用の売り場が設けられるまでに至っている。男性同士の恋愛を描く「ボーイズラブ」(以下、BL)と同規模とまではいかないものの、今やひとつの市場として確立されたといっていいだろう。
その動向に目を付けたのが、少女マンガ誌を代表する「りぼん」(集英社)と「なかよし」(講談社)の2誌。10年、前者は『ブルーフレンド』【1】、後者は『野ばらの森の乙女たち』【2】というマンガの連載を立て続けにスタートさせた(現在は2作品とも連載終了)。どちらも性描写はなかったが、女性同士のキスシーンはしっかり描かれており、"品行方正"や"保守的"といったイメージの強い2誌からすると、いささかタブーを冒したようにも思える。一般の少女マンガ誌で、"百合"マンガを掲載した狙いはどこにあるのか? 『ブルーフレンド』の担当編集者・山本氏は次のように語る。
「今はコンテンツの外で話題になるように戦略を立てないと、新たなヒット作はなかなか生み出せません。『りぼん』は小学5~6年生の女子児童が主な読者層である幼年誌なので、百合は取り入れづらい題材ではありましたが、だからこそ話題を呼べるだろうと思い、作者のえばんふみ先生に打診をしました。単行本の帯に『この百合マンガがすごい!』と記載するなど、百合を全面的に押し出してPRしたのも、既存のりぼん読者以外の層を取り込むための戦略。ただ、実はそうしたギミックを使ったのは売り方だけで、内容に関しては従来と変わらず、"りぼんらしい少女マンガ"を描くことにこだわりました」