──ロサンゼルス五輪の体操競技日本代表として、金・銀・銅の3種のメダルに輝いた森末慎二。タレント転身をきっかけに一度は体操界を去ったが、北京五輪を前に、昨年、理事として22年ぶりに古巣の日本体操協会に復帰した。そんな彼に、元選手として、そして競技団体幹部としての立場から、ビジネス化する五輪について熱く語ってもらった。
(写真/渡辺幸和)
──スポンサーの用具以外、身に着けられないという選手の状況に対して、「自由に選べないなんて窮屈そう」という意見もあるようですが?
森末慎二(以下、森) それは、しょうがないですよ。選手は制約の対価として、スポンサーからお金をもらっているわけだから。それを選手が窮屈だと感じるなら、契約をやめればいいだけ。
──森末さんがロサンゼルス五輪で活躍された84年当時も、そのようなスポンサー縛りはあったんですか?
森 僕は紀陽銀行の体操部に所属していたんだけど、当時は「アマチュア規定」によって五輪出場者がスポーツで金銭的な報酬を受けることが禁止されていたので、スポンサー契約自体がまずなかったんですよ。今でこそ五輪は"プロ選手の戦いの場"と化しているけど、92年のバルセロナ五輪より以前は「五輪はアマチュア選手のもの」という風潮があったから。当時は、JOCに加盟する競技団体のアマチュア選手の肖像権はJOCが持っていたので、たとえJOCの協賛企業のCMに出演したとしても、選手には一銭も入ってきませんでした。