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宇野常寛の批評のブルーオーシャン 第10回

「思想地図β」の衝撃

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既得権益がはびこり、レッドオーシャンが広がる批評界よ、さようなら! ジェノサイズのあとにひらける、新世界がここにある!

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『思想地図β』東浩紀(著者・編集)

 2010年12月21日、思想誌「思想地図β」(コンテクチュアズ)が発売された。これは批評家・東浩紀が責任編集を務める思想誌で、取次を通さない事実上の自主流通で創刊されたものだ。前身となった「思想地図」誌(NHK出版)の末期には、私も東氏のサポートで企画編集に参加しており、今回も「郊外文学論」という論考を寄稿している。NHK出版から独立するかたちで新創刊されたこの「思想地図β」は初刷り8000部が瞬く間に売り切れ、急遽7000部の増刷が決定された。都内を中心に「読みたくても読めない」いわば「思想地図難民」が発生し、12月末現在、ツイッター上では、まだ在庫のある書店情報が交換されている。

 取次を通さない自主流通であること、そして2300円という高価格を考えると、これは異例のことだ。そもそも私が参加していたNHK出版時代から、同誌はその内容もさることながら、その販売実績で注目を浴びていた。ハードな批評・思想誌でありながら累計1万5000部前後を維持する同誌は、「思想誌=赤字雑誌」という業界の常識を覆すものだったのだ。そこから自主流通に切り替え、価格を約1000円アップさせたこの「β」が同等かそれ以上の販売実績を見せているのは、はっきり言って「革命」だろう。出版業界のパンドラの箱が今、開いたのだ。

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