ゲイや性同一性障害を明らかにするタレントが増えてきた一方で、同じセクシャルマイノリティの中でも、レズビアンだけはいまだにカムアウトした著名人はほとんどおらず、社会的にも話題になりにくい。タレントでありながらレズビアンであることをカムアウトした一ノ瀬文香と、レズビアン&クィアカルチャーマガジン「Tokyo Wrestling」編集長・カイザー雪氏に、自身の置かれた環境を踏まえながら、この状況が生まれた理由について語り合ってもらった。
カイザー雪氏(右)と一ノ瀬文香氏(左)。(写真/早船ケン)
──今年の『24時間テレビ』(日本テレビ)のマラソンランナーにはるな愛が抜擢されるなど、セクシャルマイノリティのタレントは、今やテレビ業界においてメインストリームと化しています。とはいえ、各人のセクシャリティに着目してみると、"ゲイ男性"のタレントが大半を占めており、"レズビアン"のタレントは限りなく不在に等しい状況。また、レズビアン・カルチャー自体にスポットが当てられることも、ゲイ・カルチャーに比べて格段に少ない印象を受けます。そこで、本日は「レズビアンはなぜ表出してこないのか?」について、当事者の視点から談じていただきたく、レズビアンであることをカミングアウトされたタレントの一ノ瀬文香さん、日本初のレズビアン&クィア(≒セクシャルマイノリティ)カルチャーWebマガジン「Tokyo Wrestling」(以下、「TW」)の編集長であるカイザー雪さんにお越しいただきました。まずカイザーさんにお尋ねしたいのですが、現在の日本に、レズビアンを対象にしたメディアは、「TW」を除くとどれくらいあるのでしょう?
カイザー雪(以下、カ) ブログなどはいくつかあるものの、マガジン形態のメディアは、私の知っている限りはないと思います。以前は「アニース」(テラ出版)と「カーミラ」(ポット出版)というレズビアンやバイセクシュアル女性向けの雑誌があったのですが、「アニース」は03年に惜しまれつつも休刊し、「カーミラ」も05年に廃刊してしまいました。