──特集内でも触れたように(参照)、今「少年ジャンプ」(集英社)の看板作『ワンピース』の勢いが大変なことになっている。一読、「努力・友情・勝利」というジャンプの王道を行くような同作を支える、マンガ的表現にまつわる試みを読み解く。
いまだ爆発的な人気を誇る『ワンピース』。
最近の『ワンピース』人気は本当に凄まじい。昨年末公開の劇場版は350万人を動員し、最新59巻は初版部数で日本記録となる320万部を発行。累計発行部数も前人未到の2億冊目前で、物語もルフィ海賊団の離散、敵キャラ総登場の大戦争、義兄エースの死と、連載12年目にして過去最高の盛り上がりを見せている。
週刊少年ジャンプの看板作品である『ワンピース』は、一見、エンタメの王道を突き進んでいるように見える。しかし、その面白さの本質を支えているのは、娯楽性の裏側にあるマンガ表現を巡る興味深い試みだ。
1997年に『ワンピース』の連載が開始されたとき、私たち読者を驚かせたのはその能力であった。当時の少年マンガは『ドラゴンボール』の絶大な影響下にあり、主人公の正統的な能力といえば「気」や「霊力」「魔力」による攻撃。そんな中、ルフィの「手足がゴムのように伸びる」能力はあまりに異質であった。