社会学が果たすべき「社会問題化」への回路
井出草平氏の著書『ひきこもりの社会学』。荻上 ねじれた状況を解きほぐし、「なぜその問題へのコミットメントこそが重要なのか」というアカウンタビリティを果たしながら啓発していく、そうした社会科学者のロールモデルが求められているわけですが、なかなか可視化されにくい面がありますね。急いで補足すると、これは「即時的に役立たない研究者は無意味だ」という叫びではない。文献講読、参与観察、統計調査、アウトリーチ活動、大衆への血肉化。「専門知というバトン」をリレーしていく中では、一見「意味があるかはわからない」作業も重要です。ただし、いずれも最後は社会的機能に還元されるため、専門家に限らず、「どういう参与を果たすのか」という役割自覚が重要だということです。
井出 やはり、端的に言えば英米系の社会学者のキャリアパスが参照先になっていくと思います。日本ではイギリスのブレア政権のブレーンとなったアンソニー・ギデンズが有名ですが、アメリカで言えばクリントン政権に影響を与えたアミタイ・エツィオーニは外せない。
ログインして続きを読む