──ITの発達などによりCDが売れなくなり、ますますその市場規模が縮小していると言われている音楽業界。ここ数年では、マスコミによる報道のみならず、各地で行われる識者の講演会やブログメディアでも、活発にそのこれからが議論されている。では実際に現場で働くアーティストは、この状況をどう見て、何を思うのか?そこにまったく光は無いのだろうか。かつて栄華を誇ったこの業界の"いま"と"これから"を、アーティストや大手レコードレーベルなどの立場から追った──。
かつて数々のスターを輩出した音楽業界は、なぜ急速に斜陽化していったのだろうか。大手レコード会社が衰退していく一方で、音楽業界の内外にいる識者らの間では、その衰退要因についてや今後の音楽ビジネスついての議論が、にわかに賑わいをみせている。ここでは、80年代から現在にいたるまでの音楽のブームの趨勢を見つつ、その原因を探って行きたい。
80年代の音楽業界の主役はアイドル歌手だった。歌番組が人気を博し、彼女らのレコードが次々と50万枚を越える大ヒットを記録し、レコード産業の主力商品を占めた。こうしたブームの中で、数々のアイドル歌手を発掘したサンミュージックや芸映などの芸能系音楽プロダクションが隆盛。当時、権利の関係上、レコードなどの発売に関して、大手レコード会社の言いなりだったマネジメント事務所やアーティストが、原盤権や著作権、興行権などの権利を自分たちの側で管理するという意識が広まったのがこの時代である。