──ポップスの目利きたちが良くも悪くも"今聴くべき"ヒット・ナンバーを厳選し、渾身の100字レヴュー!
【選者】湯浅 学(ゆあさ・まなぶ)
1957年、横浜市生まれ。音楽評論家、幻の名盤解放同盟常務、湯浅湾ヴォーカル・ギター担当。著書に『音山』(水声社)、『ザ・ディープ・コリア』(ブルースインターアクションズ)、『あなのかなたに』(扶桑社)など。
"男の子女の子"の不易!
70’s
『若い夜』
ジャニーズ
ビクター/65年
山下毅雄による名曲。夜になれば若い欲望は頭をもたげるのが原理ということをジャジーに表現している。子ども向けのグループではない、ヤング・アダルトなドラマ性をスマートに提示することはその後少年隊が引き継ぐ。
『焔のカーブ』
ジャニーズ
ビクター/65年
和製ミュージカルの名曲で石原慎太郎の筆によるドライヴ感たっぷりのモーター・レーシング歌謡の名作。後に派手なカヴァーも。激情とスピード感をドラマの中心に据えるという基本が初期の段階で確立されていた。
『オリビアの調べ』
フォーリーブス
CBSソニー/68年
詩人北公次の才がいきなり開花したメルヘンGS系歌謡の名作。この曲あればこそ「涙のオルフェ」でのアングラの親玉・寺山修司登場。鈴木邦彦が英国ロック的路線をきちんと邦化していることも重要。
『愛は何処へゆく』
永田英二
ポリドール/74年
大きすぎたことが幸いしてのハード・ロック・アイドル歌謡の先駆となった。内向的愛情の暴発、という男性アイドルの基本技がこれほど身についていた人もいない。不安定だからこそ惹かれる、そういう精神の不良性。
『男の子女の子』
郷ひろみ
CBSソニー/72年
その後のジャニーズはすべからくこの曲の注釈。人類生存原理を幼児にも理解可能な姿勢からあからさまに表現した〈種の起原歌謡〉。陽気で明朗で平易だからこそ深奥の不易を伝えることができる。超越の傑作。