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CYZO×PLANETS 月刊カルチャー時評第2回──NOVEL編

『1Q84』をめぐる考察は続く──なぜ"1984"であったのか?

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──"ベストセラー"のハードルが下がる小説界に残された小さな希望......そんな良質な小説だからこそ! ここでは愛ある批評を捧げます。

 先月号の本連載冒頭において、市川真人氏・森田真功氏・宇野常寛氏による 『1Q84 BOOK3』(新潮社)をめぐる座談会を掲載した。その中で三者三様の 評価が下された同作だが、まだ語り尽くされていない部分が残っていた──。 『1Q84』は、おおむね3種類の読者に向けて書かれている。

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『1Q84 BOOK3』

 第一には、小説を読んだことがない読者だ。本作は現在3巻まで刊行されているが、1巻目ですでに主人公2人が両思いであることが暗示されているから、そういった読者にも物語が追いやすい。このタイプは、2人が結ばれるか否かが気になって寝食を忘れて読む。もっとも、普通の恋愛小説は男女の思いが通じ合っていることが、後半までわからないものだが。

 第二には、ベストセラーが好きな読者だ。このタイプは小説自体には関心がない。売れている小説にまつわる噂に関心がある。彼らに村上春樹は噂の火種を用意している。それはタイトルだ。これまで1巻ごとに「4月──6月」「7月──9月」「10月──12月」とサブタイトルが付されていることを踏まえれば、3カ月ごとに1冊が割り当てられているから、1984年についての小説である『1Q84』は全4巻になるように思えてくるのである。だが、どの巻も、物語が完結しているのかどうか判断がつかないように書かれており、それゆえ、何巻で完結するかが話題になっている。だから、このタイプはそれが気になって読む。

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