──依然、苦しい状況が続くと思われる出版業界。そこで、iPadという黒船が来日し、にわかに活気づいたかのように見えるが、週刊誌とITメディアの立ち上げに携わった2人の"編集者"は、現在の状況をどう見るのだろうか?
忌憚ない意見を交わす元木昌彦氏(右)と蜷川真夫氏(左)。(写真/早船ケン)
5月、日本ABC協会が発表した雑誌販売部数によると、2009年下半期(7月~12月)の主要な雑誌148誌の総販売部数は前期比1・90%減、前年同期比6・33%減という結果であった。だが、男性総合週刊誌を見てみると、前期比、前年同期比で、軒並み部数を伸ばしている。特に「週刊現代」は、前期比42・85%と大幅な部数アップを記録、総合週刊誌の復調が見て取れる格好だ。とはいえ、決して楽観視できない状況の中、雑誌というメディアは、出版の電子化が進む中、どのように生き残るべきなのだろうか? かつて「週刊現代」の指揮を執り、「Web現代」を立ち上げた元木昌彦氏と、朝日新聞社時代には「週刊朝日」副編集長、「AERA」編集長を歴任し、ニュースサイト「J-CASTニュース」を運営する株式会社ジェイ・キャストの蜷川真夫社長に、雑誌のIT化について話を聞いた──。
──ABCの発表によれば、「週刊誌の発行部数が下げ止まった」という見方です。
元木昌彦 「週刊現代」が昨年下半期、約10万部増という大変な伸びを記録しています。「週刊文春」など、他誌も部数を戻しつつあり、雑誌、特に週刊誌の発行部数はとりあえず下げ止まったとみていいと思う。しかし、「現代」が伸びたのは「若者や女性にも読まれる雑誌」という路線を修正し、50代以上の男性に再びターゲットを絞ったのが大きく、「雑誌全般が復活した」とは言い難い。特に一般男性週刊誌の購買層は限られており、これからもそのパイを食い合い先細りになっていくでしょう。