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八代嘉美氏の著書『iPS細胞』。
荻上 他方で、民間のサイエンスライターのように、一般誌やウェブを通じて、時には国策を批判しながらゲリラ戦的な啓蒙を試みていく立場の科学コミュニケーションも従来からある。八代さんご自身は、お立場上、前者の歴史を見てきたというわけですね。
やはり、僕がサイエンスコミュニケーションということに関して基本的に興味があるのは、ホメオパシーやEM菌、"ゲーム脳""ネット脳"などのような、科学にかかわる言説で、不確かなままに広がり実害をもたらしてしまうような「流言」に対するアンチとしてどう機能させ得るかという点です。そのためには、政府からの情報公開であれ、市井の研究者や専門訓練を受けた者らによるゲリラ戦であれ、効果的にアカウンタビリティを果たしていくということが求められる。「より確かな情報」を共有するためには、いかにすればよいのかという課題です。