「検察はひとつの捜査機関にすぎないのに、まるで検察、特に特捜検察はオールマイティーだという意識が強すぎることに、われわれは気づくべきです。彼らに過剰な期待をする世論が、検察イコール正義という意識を強くさせ、それが特捜検察の気負いになっていく。そこに検察内部がかかえる根本的な問題が重なり、本来の正義が歪められてきたのではないでしょうか」
そう語るのは、自著『歪んだ正義』で、特捜検察の「不自然な」捜査の実態を告発したジャーナリストの宮本雅史氏。氏が指摘する検察内部が抱える問題とはなんなのか?
そのひとつは、特捜検事の能力の低下だという。特捜部の捜査は、まず仮説も含めて、事件の構図を描き、これを証拠や自白によって裏付けていくというやり方だ。
「昔の特捜部というのは、事件の構図を完璧に描き、それを周りが納得する形で立証していったから、誰も文句を言わなかったのです。ところが、今も同じことをしているのに、事件にほころびが見えてくる。それはまず描くべき構図を間違えているし、立証能力も落ちてきているからです」