前編はこちら
メディアと専門知の「マッチング」の質を上げよ
安田氏の初編著作『学校選択制のデザイン』
荻上 この連載は、若き論客の専門知をベースに、メディアや大衆に対して情報発信し、具体的な問題解決につながる議論を提示するのが目的です。これまでメディアでなされてきた議論のほとんどは、イデオロギーや道徳を叫んだり、「○○の時代」といったコピーライティング能力を競う文化評論といったものでした。社会科学の主な方法論は「理論(解釈)」「統計」「フィールドワーク」などがありますが、アカデミシャンであってもメディア上では「理論家」が目立つ一方で、エヴィデンスベースドな議論(実証論拠に基づく議論)が目立ちにくかった。
でも、この10年で大きく状況は変わってきています。一例は、「少年犯罪が増加している」といったセンセーショナルに煽るマスメディア報道に対して、「犯罪統計では減ってますが何か?」といった実証的反論が増えたこと。メディアの発言に対しても、ネガティブチェック(検査)が行われやすくなり、そうしたチェックに耐えられない論評は、徐々にではありますが信頼を得難くなってきている。特に若手研究者にはそういう態度が染み付いていて、ブログやTwitterなどを利用して、ウェブなどで広がる俗説をチェックをする人も増えてきています。