──政界から映画界、さらにはグルメ界まで、各界"マンガに造詣が深い"賢人が、タブー破りのマンガを選出!
[選者紹介]
大西祥平
おおにし・しょうへい。1971年、東京都生まれ。マンガ評論家・ライターとして活躍する傍ら、B級グルメマンガの巨匠・土山しげる氏の人気作『極道めし』(双葉社)で協力も務めるなど、グルメマンガジャンルにも精通。
『アシュラ』
1973年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で『包丁人味平』(原作・牛次郎、漫画・ビッグ錠)がスタートして以来、寿司からラーメン、カレー、和食などなど、あらゆる料理カテゴリーがマンガ化されてきました。そんなグルメマンガ最大のタブーといえば……食の絶対禁忌「人肉食」ではないかなと。
まず、70年に大問題を巻き起こしたのが、ジョージ秋山の『アシュラ』。応仁の乱の時代を背景に、飢饉続きで"人が人を食べなければ生きられない"という、シビアな環境を描いたものです。食人の業を背負った母親に食べられかけた子どもはどう育っていくのか。極めてシリアスで重いストーリーが、露悪的に描かれていくのですが……冒頭から描かれる食人シーンがことさらに取り上げられ、大きな反感を買ってしまった。ジョージ秋山の意を汲んだ出版社も作品性を掲げて応戦したのですが、ヒステリックな世間のパワーには抗しきれなかったんですよね。結局、本作を掲載した「週刊少年マガジン」(講談社)そのものも、全国各地で次々と有害図書に指定される憂き目に遭ってしまいました。