──政界から映画界、さらにはグルメ界まで、各界"マンガに造詣が深い"賢人が、タブー破りのマンガを選出!
[選者紹介]
平山夢明ひらやま・ゆめあき。1961年、神奈川県川崎市生まれ。作家。96年に『SINKER』(徳間書店)でデビュー。著書に『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社)など。今年、『ダイナー』(ポプラ社)で日本冒険小説協会大賞を受賞した。(撮影/寺澤太郎)
『亡霊学級』
中学1年生の時につのだじろうさんの『亡霊学級』を初めて読んだのですが、あまりに衝撃が強くて、読んだ日の夢に見ましたね。特に、溺死した学校の先生が出てくる「水がしたたる」という話と、くみ取り式便所に引きずり込まれる「手」がとんでもなく怖かった。寝言で「怖いよー、怖いよー」とうなされていたらしく、母親に「そんな怖い本を読むのはやめなさい!」と怒られたほどでした。
1970年代当時、楳図かずおさんなど、すでにホラーマンガを描いている人はいましたが、このマンガはやたら"本気"だったんです。写実的なタッチでホラーを描いたのは、つのださんが初めてだったんじゃないのかな。時折挟まれる妙にザラザラ感のあるコマやドキュメンタリータッチは斬新でした。あと、同じようにその時期、日野日出志さん(『蔵六の奇病』『地獄の子守唄』など)のマンガも、本気っぽくて怖かったのを覚えています。奇形や腐敗、スプラッターなど、それまで誰も踏み込まなかった領域まで描いていて、衝撃でした。