──気鋭のホラー作家・平山夢明氏が選ぶ「ホラーマンガの一線を越えた怪作」、若き映画監督・松江哲明氏が選ぶ「真の恋愛に肉薄した傑作」、マンガに造詣が深いライター・大西祥平氏が選ぶ、「グルメマンガの禁忌を打ち破った問題作」など、現在では連載不可能なタブー破りの名作を選定!
[選者紹介]
石破茂いしば・しげる。1957年、鳥取県生まれ。自由民主党政調会長。防衛問題の論客としても各メディアで活躍。アニメ・マンガ文化にも造詣が深い。
『サンクチュアリ スペシャル版』
私が『サンクチュアリ』と出会ったのは、1993年頃のこと。当時話題の政治マンガといえば、『加治隆介の議』(講談社)、『票田のトラクター』(小学館)、そして『サンクチュアリ』の3作品でした。若い政治家にウケていたのは、サラリーマンが政界でのし上がる『加治隆介の議』で、非現実的だけれど、「そうだったらいいな」と思わせてくれる魅力がありましたね。それもそのはず、作者の弘兼憲史先生が連載前に、私も含めた"改革派"と呼ばれる若手議員たちに話を聞き、その良いところだけを集めてキャラクター造形をしましたから(笑)。
しかし、私は『サンクチュアリ』にも強く惹かれましたね。2人の男が、日本を変えるべく政治の世界と裏社会で奔走する。そのために取る破天荒さはさておき、高邁な理想に向けて突き進む主人公・浅見と北条に、強いシンパシーを感じたからです。かつての村山富市擁立を念頭に置いた与野党の攻防や、加熱する日米自動車摩擦など、現実に即したエピソードも多く、リアリティがありました。