アーレフ公式HPより
日本中を震撼させた地下鉄サリン事件から15年。被害者が今も苦しみを抱えている一方、当時、オウム真理教に身を置いていた一般信者たちは、どのような月日を送ってきたのか? このたび刊行された『オウムを生きて』(青木由美子・編/小社刊)は、元信者たちと麻原彰晃の四女ら計7人にインタビューし、彼らにとっての「オウム」や「事件後の人生」などを詳細に聞き取った貴重な資料だ。そこから見えてくるのは、彼らが決して特別な存在ではないという真実だった──。
『1Q84』(新潮社)の執筆にまつわるインタビューで、村上春樹氏はこう語っている。
──事件への憤りは消えないが、地下鉄サリン事件で一番多い8人を殺し逃亡した、林泰男死刑囚のことをもっと多く知りたいと思った。彼はふとした成り行きでオウムに入って、洗脳を受け殺人を犯した。日本の量刑、遺族の怒りや悲しみを考えれば死刑は妥当なのだろうと思うが、基本的に僕は死刑制度に反対だし、判決が出た時は重苦しい気持ちだった。ごく普通の、犯罪者性人格でもない人間がいろんな流れのままに重い罪を犯し、気がついたときにはいつ命が奪われるかわからない死刑囚になっていた──そんな月の裏側に一人残されていたような恐怖を自分のことのように想像しながら、その状況の意味を何年も考え続けた。それがこの物語の出発点になった。(読売新聞/2009年6月16日付より引用)