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町山智浩の「映画がわかる アメリカがわかる」 第29回

厳格なユダヤ人の信仰とジョークとロックンロール

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【今月の映画】

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『ア・シリアス・マン』
1967年、アメリカ中西部──。妻とふたりの子どもと暮らす、ユダヤ人大学教授ラリーの人生は、ごくごく真っ当なものだった。だがある日、妻のジュディスが離婚を切り出し、人生の歯車が狂い始める。子どもの素行不良、肉親の交通事故、卒業をめぐる賄賂などマジメなユダヤ人教授に多くの災難が降りかかり……。
監督/ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 出演/マイケル・スタールバーグ/リチャード・カインド 日本公開は未定。

 コメディアンにはユダヤ系が多い。マルクス兄弟とウディ・アレンのほかにも、メル・ブルックス、ピーター・セラーズなど挙げればキリがない。

 実際、数千年にわたって弾圧されてきたユダヤ系はジョークの宝庫として知られている。笑いは過酷な現実から自分を守る盾だった。祖国を失い、差別され、宗教裁判で拷問され、ポグロムで家を焼かれ、ホロコーストで虐殺された。あまりに理不尽だ。こんな現実は受け入れ難い。なら、笑い飛ばすしかない。

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