年が明け、この時期になると思い出すのが、力士時代の師匠、春日野親方との別れだ。1月10日は、俺が「おやじ」と慕っていた親方の命日なのである。
春日野親方は、現役時代は「土俵の名人」と呼ばれた横綱・栃錦。俺は中学1年のときに、まだ現役だったおやじに「相撲取りにならないか?」と声を掛けられてから、現役を引退した後まで、ずっとお世話になりっぱなしだった。
そんなおやじとの別れに向けた日々は、今でもはっきりと思い出す。俺にとっては、悲しくもすばらしい想い出だ。
おやじは、横綱として大相撲の黄金時代を支え、引退後は親方として、後進を育成。同時に日本相撲協会の理事長として、両国国技館を建設するなど、14年もの間、相撲界の発展に尽力した。その功績を讃え、おやじが生まれ育った地元・JR小岩駅の構内には、栃錦の銅像があるほどなのだ。
だが、そんなおやじも、昭和の歴史とともに人生に幕を閉じることになった。