ただでさえ、素材の状態によって味が変わってしまうスープ。普通、独学やカンだけでは難しいですよね。
──あるラーメン本で、店主の修業先の項目に、「独学」という文字が目立った。そんな簡単に作れるものなのか?と思ったところ、何やら魔法があるらしい。
首都圏を中心に、有名店で修業した店主の新店が急増している。名店の味を受け継ぎ、オープン時から完成度の高いラーメンを出すことで注目を集めているが、この実情もなかなかのものらしい。
今年の春にオープンし、マスコミにも取り上げられたある店の店主は、人気店Vで修業を積んだのだが、出店間際、スープがとても客に出せるようなものではなく、出入り業者に泣きついてレシピ指導を受けたという。名店修業と腕前は、関係ないということか。
マスコミが紹介する名店となれば、研究を重ね、独自の味を追求しているだろうと思われがち。しかし、業者からレシピを購入したり、指導を仰いだりしている店は少なくないのだ。そうした指導は、食材メーカーがフードコーディネート業務を行う子会社を設け、裏事業として行っているという。
「食材業者は毎日多くの店に出入りするため、自然と店が使う食材や大まかなレシピがわかるんです。そこで得たノウハウを、人気が陰り始めた店の味の立て直しや、新店立ち上げの際に売るんですよ」(前出店主・A氏)
また、そのレシピに自社商品を盛り込むことで受注も増えるのだとか。
さらに、先述のラーメン店Wと蜜月関係にある老舗食品会社のUでも、かなりクオリティの高いレシピを提供してくれるという。Uの社員であるB氏は、業界では有名なフードコーディネーター。東海エリアの有名な行列店、SやTのスープは、Wの味を元に作り上げたB氏のレシピがベースなのだ。
ちなみに、名店の味"完コピレシピ"は、1レシピ100万円単位という噂も。二番煎じでこの対価も惜しくないほど売れるというのだから、筆者もラーメン店を開業すべきだろうか......。
(文/安楽由紀子、秀也)
(絵/師岡とおる)